ビッグデータの正体
少し前に読んだ本を紹介します。
ビッグデータに対する考え方みたいなものが網羅的に書かれた一般向けの本です。サラッと読むのにおすすめです。
本書の中で、「因果関係を特定する必要はなくて、相関関係を見つければそれで良い」という主張がありました。
世の中、因果関係で説明できないことは山ほどあるが、悲しいかな、人間というものは、原因がわからないとすっきりしない。
しかし因果関係に執着しないのが、ビッグデータの世界だ。重要なのは「理由」ではなく「結論」である。データ同士の間に何らかの相関関係が見つかれば新たなひらめきが生まれるのだ。
相関関係は、正確な「理由」を教えてくれないが、ある現象が見られるという「事実」に気づかせてくれる。基本的にはそれで十分なのだ。
例えば、膨大な電子カルテのデータから「オレンジジュースとアスピリンの組み合わせで癌が治る」ことが言えるなら、正確な理由はどうあれ、この組み合わせが癌に効くという事実の方がはるかに重要となる。
航空運賃の決まり方など詳しく知らなくても、航空券の買い時さえわかれば財布にやさしい。それで十分だ。
ビッグデータの世界では、ある現象の理由を何が何でも知る必要はない。データがすべてを物語っているからだ。
最近は因果推論が流行しているようですが、こんな考え方もあるんですね。
(因果推論についての一般向け書籍は、例えば下記)
Amazonでおすすめ商品を提示するだけであれば、たしかに因果関係まで考えなくてもいい気がします。
ファイナンスの分析は理論モデルに基づくものがほとんどなので、そもそも因果関係を問題にすることは少ないです。
大量のデータ(縦にも横にも)があれば、テクニカル分析(ただの相関関係に着目)のようなものであっても有効に機能するということでしょうか。
(テクニカル分析を本気でやっている人ごめんなさい。)
金融機関の店舗削減
メガバンクが「人減らす」「店舗減らす」と息巻いている今日このごろですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
実際、店舗に来るお客さんって収益的な貢献は少ないだろうから、店舗に人を貼り付けておくって無駄なんだろうな…と思います。
(収益に貢献するお客さんのところにはこちらから出向きます。)
話は変わりますが、先日、五反田のくら寿司に行ってきました。
人生で初めてのくら寿司はすごかったです。
値段と味のバランスもそうですが、店員がすごく少ない!
注文やお会計が全部自動化されていて、レジでの支払いも機械とマンツーマンで終わります。あの頃考えた近未来が近くまで来ていますね…
自分がレジに行ったとき、ある高齢者の夫婦が支払いをしていたのですが、機械に不慣れで悪戦苦闘した挙句、店員さんがサポートしてくれてなんとか支払いを終えていました。そのご夫婦、帰り際に「支払いがめんどくさい。こんな店ありえない。」と吐き捨てて行かれて、悲しい気持ちになりました。
なんとなく日本社会って、そういうところがある気がするのです。
くら寿司はいろいろなところを自動化しているから安いのに…
手間に対して適正なお金を払うことに慣れていないというか…
きっと、金融機関の窓口でもそんなところがあって、人や店舗減らすっていうことになるんでしょうね(雑)。
ふと思ったのですが、「自分の生産性以下の給料しか貰えない」、「相手の生産性以下の支払いしかしない」ことが一般的になっている社会だと、それはそれでうまく社会は回るけど、労働生産性(国際比較とかされている例のやつ)が過小に見積もられてしまうことってあるのかな。
とりあえず、自分は金融機関の店舗には一切行かない(ネットで済ます)ので、人も店舗もどんどん減らして手数料引下げてください。
あ、でも自分は首にしないでください。
金利と経済(翁邦雄)
1年前の本ですが、翁邦雄先生の「金利と経済」を読みました。
各国の中央銀行の動向をわかりやすくまとめて解説してくれる先生は貴重です。
毎回楽しみにしてます。
さて、内容を簡単にまとめておきます(雑記)。
第2章 バブルとデフレ、どちらを取るか
自然利子率
グリーンスパンの回顧録
- 1990's~200's前半のGreat Moderation(成長率・インフレ率安定)は中央銀行のおかげではなく、趨勢的な長期金利低下の影響である。
- グリーンスパンは金利低下圧力・デフレ圧力におびえ、テイラー・ルールよりも緩和的な政策をとっていた。
Rachel and Smith(2015)(Bank of England)"Secular drivers of the global interest rate"
- 先進国の実質長期金利は、1990年代以降一貫して低下している(最近の水準はマイナス)。
第3章 長期停滞が懸念される理由
Summersの長期停滞仮説(Secular Stagnation)(2013.11 @ IMF Conference)
- 金融危機に際して、大規模な政府支出をしたにも関わらずインフレは起きない。
- 米国経済は恒常的な需要不足ではないか?
- 様々な推計で、自然利子率はマイナスとなっている。
Rachel and Smith(2015)
8つの要因で自然利子率を説明 ⇒ 長期停滞仮説を裏付け
- 人口要因(貯蓄増)
- 不平等の拡大(消費性向の低下)
- グローバルな貯蓄余剰
- 資本財の相対価格
- 公共部門の投資
- 信用スプレッド
- 成長要因
- その他(景気等)
低い自然利子率が恒常的に続くことの影響
- 経済へのnegative shockに対して、金融政策がzero-lower-boundに頻繁に直面
- 非伝統的政策を頻繁に利用
- 非伝統政策は効果に疑問があり、中央銀行のBS拡大懸念も
- 財政政策の役割が拡大
企業や金融機関が利回りを追求
第4章 自然利子率がマイナスの場合の金融政策
自然利子率がマイナスの場合の金融政策
Krugmanによる提案@1998(予想インフレ率の引上げ)
- 日銀は"credibly promise to be irresponsible"をするべき(time-inconsistency problem)
- 日銀による「量的・質的金融緩和」の導入(見せ金・commitmentとしての量的緩和)
- Krugmanの提案は、長期停滞の下では成り立たない。(いつか回復する自然利子率を前提)
Krugman「日本再考」@2015.10
- 日本が抱えている課題は「不況からの回復」ではなく、「財政政策なしで独り歩きできる経済」
- 長期停滞仮説を念頭に置くと、金融政策が直面する課題はより困難
第5章 マイナス金利政策の登場
欧州におけるマイナス金利の導入(デンマーク(2012.7~))
マイナス金利の物理的限界
マイナス金利の功罪
- メリット
▷金利の低下・景気へのポジティブな影響・インフレ圧力・自国通貨の減価
- デメリット
▷銀行部門の収益低下
[短期的]導入時に1度は収益が高まる
[長期的]利ざやの低下、イールド・カーブのフラット化によるタームプレミアム低下
▷金融システムの安定性低下
収益低下による内部留保の低下・リスク・テイクの伸長
- メリット・デメリットの程度は各国により異なる
▷欧州では、景気好転による信用リスク低下で、銀行収益にはプラスと主張
第6章 日銀による「マイナス金利」追加の功罪(2016.1.29)
3段階の構造
- 基礎残高210兆円:+0.1%
- マクロ加算残高:±0%
- 政策残高:▲0.1%
国債市場に発生するバブル
- 日銀トレードの存在
◯銀行収益への大きな影響
第7章 イールドカーブ・コントロールの行方
日銀「総括的な検証」
長短金利操作付き量的・質的緩和
感想
うーん、わかりやすい。
この本の出版以降もマイナス金利は続いているけど、どれほどの効果があるんだろう。
マイナス金利導入のデメリットとして「過度なリスクテイクの追求」が言及されてるけど、これは実際に起きてる気がする。よく話す金融機関では、ガイドライン金利(基準金利)が形骸化しているってよく聞くし。
非伝統的金融政策はなんだか綱渡りですなあ。
ブログはじめました
勢いでブログをはじめてみました。
読んだ本の感想やふと考えたことなどを備忘的に書きたいと思います。